
AIに作業を任せるとき、私はつい「作って」と言ってしまう。
でも、今日いちばん効いた修正は「作る」ではなく、「先に探す」だった。
ある制作フローで、すでに準備済みの台本があるのに、自動化がそれを使わず、また新しく台本を書き始める事故が起きていた。
ぱっと見ると小さな無駄に見える。
でも、これはAI運用ではかなり危ない。
人間は「準備済み」と書いた時点で、もう使える材料が置いてあるつもりでいる。
一方で自動化は、その言葉の意味を知らない。
「準備済み」という文字を読んでも、どこに何があるか、使っていいのか、書き直すべきなのかまでは判断できない。
だから、何も指定しなければ、AIはまた作る。
しかも、わりと自然な顔で作る。
「準備済み」は、人間の頭の中では完了している

今回の問題は、準備済みの素材そのものが悪かったわけではない。
むしろ逆で、素材はすでにあった。
エピソード用のフォルダがあり、台本もあり、後続工程に回せる状態になっていた。
人間の目で見れば、「これはもう使えばいい」と分かる。
でも、自動化の側には、その判断が入っていなかった。
フローは「選ばれたら台本を書く」という一本道になっていた。
そのため、既存フォルダがあっても、新しい台本作成に進んでしまった。
ここでズレていたのは能力ではなく、言葉の定義だった。
人間にとっての「準備済み」は、「探せば完成物がある」。
自動化にとっての「準備済み」は、ただの状態名だった。
この差は、放っておくと地味に積もる。
似た内容のファイルが増える。
どれが正本か分からなくなる。
後から見た人が、古いものを捨てていいのか、新しいものを使うべきなのか迷う。
AIが速く作れるほど、この迷子の増え方も速くなる。
新規作成より前に、既存確認のゲートを置く

直した方針は単純だった。
新しく作る前に、まず既存の成果物を探す。
もし使えるものがあれば、それを採用する。
足りない部分だけを補う。
それでも足りなければ、そこで初めて新規作成に進む。
言葉にすると当たり前だ。
でも、自動化に入れておかないと、当たり前には動かない。
たとえば、こんな順番にする。
- 既存確認:同じテーマのフォルダや下書きがあるか見る
- 採用判断:使ってよい状態か、必要な部品がそろっているか見る
- 差分補修:足りない確認表や読みチェックだけ追加する
- 新規作成:既存がない時だけ、ゼロから作る
大事なのは、AIに「作るな」と言うことではない。
AIには作ってほしい。
ただし、作る前に、机の上にもう置いてあるものを見てほしい。
新規作成は、最初の反応ではなく最後の手段にする。
これだけで、AIの仕事はかなり落ち着く。
同じ話を二度書かない。
同じ画像を二度作らない。
同じ調査を二度走らせない。
「速いけど散らかる」から、「速いし積み上がる」に少し近づく。
AIは「存在する」と「採用する」を勝手にはつなげない

ここで気をつけたいのは、ファイルが存在するだけでは足りないこと。
AIにとっては、あるものを見つけることと、それを正として採用することは別の動作になる。
人間なら、フォルダ名や更新日や文脈から「これは使うやつだな」と読める。
でも、自動化はそこを曖昧にすると弱い。
だから、採用条件をできるだけ言葉にする。
たとえば、こういう条件。
- そのフォルダに本文がある
- 必須の確認ファイルがある
- 直近の型とかぶっていない
- 追加修正は「読み確認だけ」など、範囲が小さい
- 採用した場合は、ログに「再利用した」と残す
この条件がないと、AIは「見つけたけど不安なので作り直す」か、「見つけたけど無視する」のどちらかに寄りやすい。
どちらも人間から見ると雑に見える。
でも、AIが雑なのではなく、採用ルールが空白なだけだったりする。
AIに再利用させたいなら、再利用の合格条件まで渡す。
これは、プロンプトだけの話ではない。
日々のフォルダ名、台帳、状態名、ログの書き方にも関わる。
「準備済み」と書くなら、準備済みとは何を含むのか。
「採用」と書くなら、採用後に何を追加してよいのか。
そこまで決めておくと、AIは急に扱いやすくなる。
作業を速くするより、同じ作業を増やさない

AIを使うと、つい「もっと速く作れるか」に目が向く。
でも、運用で効くのはそこだけではない。
むしろ、毎日回す仕組みでは、同じ作業を増やさないことのほうが効く。
新しく1本作るのは気持ちいい。
でも、似たものが2本できると、後で必ず誰かが迷う。
これはどちらを使うのか。
古い方は消していいのか。
片方だけ修正されて、もう片方は古いまま残っていないか。
AIが作業を増やすスピードに、人間の整理が追いつかなくなる。
だから私は、今日の修正をかなり大事だと思っている。
新しい機能を足したというより、AIに「まず棚を見る」癖をつけたから。
自動化は、走れば走るほど履歴が増える。
履歴が増えるなら、再利用のルールが必要になる。
作る力だけ強くしても、積み上がらない。
探す力、選ぶ力、使ったことを記録する力があって、やっと次の作業が軽くなる。
AIに任せる前に、「新しく作る前に、もうあるものを探す」を一行入れる。